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 紅葉の候、11月27日〜30日の4日間、上海中医薬大学および附属病院で研修をしてきました。西天満鍼灸整骨院のスタッフが揃って研修に行く事は初めての事で実りある旅になるように出発前から一同、気を引き締めていました。
 研修の内容は一日目上海中医薬大学附属曙光病院での治療研修、二日目上海中医薬大学での解剖実習でした。
 特に一日目の病院研修は推拿治療の本場中国で中医師の先生達が中医学の一つの柱である推拿治療を病院という医療機関でどのように実践しているのか、とても興味津々でした。

 一日目、朝9:00から曙光病院の推拿科で見学しました。約10畳位の一室でベッドは2台、先生用の机と本棚がありました。本棚の中には専門書の他に縫いぐるみや玩具がたくさん置かれており何の為に縫いぐるみや玩具があるのか初めはわかりませんでした。紹介されたのは女医、康麗弟先生でした。彼女は四十代後半で丸い顔に白い肌、白衣を着こなし笑うとエクボが見られ、自然な美しさ(中国の中年女性は殆ど化粧をする習慣が無い)、優しそうな雰囲気はとても印象的でした。

 研修の時に訪れた患者さんは男性、女性、生後一ケ月の赤ちゃんから年配の方、様々な年齢層の方が見えました。症状は五十肩、腰痛、頚椎捻挫、斜視、斜頸などの運動器疾患と胃腸炎、糖尿病、風邪などの内科系疾患の幅広い症状の治療を行っていました。
 その中で印象的だったのが50歳位でスポーツ体型の男性患者です。(普段はバドミントンを良くしているそうです。)朝起きたら背中を中心に首や腰が固まり動かすと激痛が起こるようで頭を下げる事も出来ず、靴ひもを結ぶ事が出来ませんでした。康先生の診療室に入ってきた当初はベッドに上がるだけで痛みが走り、顔をしかめながらやっとの事で治療を受ける体勢になりました。先生は先ず背中を検査してから治療に入り、約10分間、うつ伏せで肩甲骨内側、上部の脊柱部、頸部を中心に治療をしてから、患者さんを上向きに寝かして首の治療をし、最後にイスに座らせて患者さんの腕を持ち上げ最終調整をしました。          
 治療が終わり、治療の結果を見守っていると患者さんはサッと素早く立ち上がり、靴ひもを軽く結び、笑い顔を見せました。治療の効果にびっくりしているさなか、康先生に視線を向けると微笑みながら次の患者さんの治療に淡々と入りました。
 もう一人の患者さんは2歳ぐらいの小児(斜視の治療)で母親が子供をベッドに寝かし先生の治療が開始されるのを待っていました。母親は子供が体を動かさないように両手でしっかり押さえました。先生は子供の治療を始める前に、本棚に置いてあった玩具を取り出して、子供にいくつか選んで与えました。先程、本棚に玩具が置いてあった理由が、ここで初めて分かりました。小さい子供を治療する時の康先生の心遣いだったのです。          
 康先生は真剣な顔を笑顔に変えて(康先生の普段の治療はとても真剣な顔で行っています。)子供と話しながら子供をリラックスさせた状態で目の周りのツボを狙い治療を始めました。子供は康先生に慣れて笑っているものの頭が右左に回って、大人しく静かにして居られませんでしたが康先生は治療の手を止まる事なく、子供を癒しながら治療を続けました。やっと治療が終わり、母親が子供を抱き上げると、子供は自分の小さい口に手を当て康先生に向かって投げキッス(中国では「飛吻」と言います。)をしました。我々も含め、病室にいた人々は子供の愛嬌たっぷりの仕草に笑ってしまいました。
 子供の母親は「この子の斜視は3ヶ月の治療を経て大分良くなった。それは康先生のお陰様です。」と話してくれました。
 康先生は外視より内視の方が、年齢は小さければ小さいほど治りが早いと説明して下さいました。
小児推拿

 康先生の治療レベルは日本のほとんどの柔道整復、按摩マッサージ、鍼灸の治療者と遙かに違っていました。上海中医薬大学を卒業し、中国政府が認可する医者で、20年以上の経験を積んだベテランな医者です。当然日本の医者と同じ処方権を持っています。患者さんの必要があれば薬の処方もなされます。
 康先生は医者と言う身分、地位を鼻にかけず、医者の『人の健康、命を守る』、という本来の使命を全うし、誰に対しても腰が低く、物静かで、いつも微笑んで人柄もとても魅力的でした。勿論実力も折り紙付きで、先生の評判を聞いて遠方から来院した患者さんもいました。患者さんの中の一人は我々に胸を張って「康先生は有名な先生だよ。」と誇らしげに語ってくれました。
 1時間の昼食事が終わって私たちが先生の治療室に戻った時、先生は既に治療を開始していました。一日10数人の治療しているみたいですが些細な疲れは見られず、優しい笑顔はまるで患者さんたちを安心させる薬のように作用していました。
 患者さんは治療が終わった先生に感謝の言葉を述べると先生は注意事項や次回の治療の内容を丁寧に伝えていました。

 午後3時15分、研修を終え帰る時間になり先生に感謝と別れを告げました。私達は康先生の治療室を離れてエレベターに向かいました。途中思わず振りかえって、もう一度先生を見たら、先生は、何も無かったみたいに患者さんの治療に一生懸命専念していました。その姿は今でも目に浮かびます。心の中で康先生に対して尊敬の気持ちが油然と昇り上がって来ます・・・・・。
 短い研修でしたが康先生という女医は私にとって大きな収穫になりました。
 康先生の患者さんに対する奉仕の姿勢を学び、私たちの患者さんに対する姿勢を改めなければならないと感じました。
 上海での貴重経験を活かし西天満鍼灸整骨院に開花させるのが私達これからの仕事と感じました。

 最後に研修の期間中、治療を受けられなかった患者様に、ご迷惑をおかけしました事を改めてお詫び申し上げます。

(高)
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